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―暁生は何も言葉に出来ず、ただうつ向いていた。
どうすればいいのかわからない。
何も考えられない。
そんな暁生に対し、どこか落ち着かない様子の香穂は、テーブルの隅の伝票を手にすると静かに席を立った。
「さよなら」
それは暁生にしか聞こえない小さな声だった。
暁生はうつ向いたまま、遠ざかる香穂の気配を背中に感じていた。
香穂も振り返ることはしなかった。
「香穂…」
暁生が立ち上がり振り向いたのは、香穂が店を出た直後だった。
慌てて店を出た。
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