18人が本棚に入れています
本棚に追加
香穂にとっては既に終わっていることかもしれないが、暁生にはそう感じられた。
「香穂……」
声にならない苦しい叫び。
暁生はポケットの中のビー玉を握り締めた。
この声に気付いたわけでもないが、香穂は抱き寄せられた男性の肩越しから、賑やかな傘の間に雨に打たれ立ちすくむ暁生を見つけた。
それでも香穂は見ない振りをするかのように、男性に促されるままバスに乗り込んだ。
いろんな感情が入り混じり、心が壊れてしまいそうだった。
まるであのビー玉がひび割れてしまうように。
最初のコメントを投稿しよう!