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―久しぶりの香穂(カホ)からの連絡。
初めての店。
そして《あの》コロンの香り。
「結婚しようと思うの……」
別れを予感していなかったわけではない。
それでも信じられなかった。
信じたくなかった。
香穂は左手の薬指に光る指輪をそっと隠すように、それでいて暁生(アキオ)に見せつけるかのように右手で触れている。
結婚の何がいいのかわからない。
たかが小さな宝石一つがその証で、自分の未来ごと売り渡すに等しい哀しい行為。
暁生にはそう思えてならなかった。
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