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第二章
***
「んだよお前さっき帰って来てからイラソワしやがって」
同居人である間にそう指摘され、眠兎は返事の変わりに間を睨み付けた。睨むのはそれが間違っていないからだ。
因みにイラソワとは間が造った造語で、イライラソワソワの略である。
間とはお互いの利害一致で同居している。
彼は便利屋をしていて、彼が依頼を受け主に眠兎が肉体労働をする。
眠兎がカンパニーに居たことを知っている人間であり、逃亡の際にささやかな手助けをしているが、
手助けについて眠兎は知らない。
逃亡後路地裏で途方に暮れていた眠兎に始めに声を掛けたのは間だった。
道端に落ちていたガラス片で自分の動脈を押さえられても
何もなかった様に話しかけたのは彼が初めてだったので、眠兎は少し戸惑った。
提案は
省略して説明すると
自分のアパートに住まわせる変わりに眠兎の身体能力を貸して欲しいということ。
腰痛と適性を理由に言われた気がするが、そんな事を言われても生きてきた環境から考えて信用出来ない。
しかもこいつは自分の正体を知っている。
こいつはカンパニーと同じ様に自分を道具として使役するのでは無いのか。
眠兎は初め、間を信用していなかったし、怪しいそぶりを見せれば殺すつもりでいた。
しかし、特に過去に触れるでもなく、道具として扱うでもなく。
ありのままの眠兎をありのままで接する彼に、
いつしか少しずつ心を許していることに眠兎自身は気付いていない。
…今日会った変な人間の事を話そうか?
そんな考えが頭に浮かび、
眠兎は一瞬迷ったが結局止めた。
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