第二章

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不機嫌の原因は解っているが、 話した所でどうにもならないし、どう話せば良いのか解らなかった。 第一、人違いで絡まれた話などしてもつまらないだろうと判断した。 あんな男に見覚えなどなかったし、凪という名前にも覚えがない。 脳裏に浮かぶ必死な顔と、冷たく言い放った時の捨てられた子供の様な、絶望した顔が眠兎を苛立たせる。 そもそもあの男の勘違いなのだから自分は悪くない。 むしろ迷惑を被ったはずだ。 そう思うのに、気付くとあの顔を思い出してしまう。 (そもそもあいつが悪い。何度違うと言っているのに聞く耳を持たなかった) あんな顔をされると誰でも多少の罪悪感を覚えてしまうだろう。 それに、あの頭痛と声は何だったんだろう? あの頭痛と声が収まる寸前、確かにあの凪という男の声が重なった様な気がする。 (…やはりどこかで会っていたんだろうか?) 間が何か文句を言っているがそれを一瞥した後 もう一度記憶を辿るが、あの凪という男が出てくる事は無かった。 やはりあの男の勘違いだったのだ。 眠兎は大きくため息を吐き、凪という男の事を考えるのを止めた。 (……それでも、あいつの探しているミントにいつかあいつが会えると良い) あんな顔をするのだ。きっと大切な人間に違いない。だからこそ自分である事は有り得ない。 そこまで考えると、今度こそ眠兎は考えるのを止めた。
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