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不機嫌の原因は解っているが、
話した所でどうにもならないし、どう話せば良いのか解らなかった。
第一、人違いで絡まれた話などしてもつまらないだろうと判断した。
あんな男に見覚えなどなかったし、凪という名前にも覚えがない。
脳裏に浮かぶ必死な顔と、冷たく言い放った時の捨てられた子供の様な、絶望した顔が眠兎を苛立たせる。
そもそもあの男の勘違いなのだから自分は悪くない。
むしろ迷惑を被ったはずだ。
そう思うのに、気付くとあの顔を思い出してしまう。
(そもそもあいつが悪い。何度違うと言っているのに聞く耳を持たなかった)
あんな顔をされると誰でも多少の罪悪感を覚えてしまうだろう。
それに、あの頭痛と声は何だったんだろう?
あの頭痛と声が収まる寸前、確かにあの凪という男の声が重なった様な気がする。
(…やはりどこかで会っていたんだろうか?)
間が何か文句を言っているがそれを一瞥した後
もう一度記憶を辿るが、あの凪という男が出てくる事は無かった。
やはりあの男の勘違いだったのだ。
眠兎は大きくため息を吐き、凪という男の事を考えるのを止めた。
(……それでも、あいつの探しているミントにいつかあいつが会えると良い)
あんな顔をするのだ。きっと大切な人間に違いない。だからこそ自分である事は有り得ない。
そこまで考えると、今度こそ眠兎は考えるのを止めた。
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