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何枚も何枚も、飽いた様子もなく、真っ白な頁に
只、ひたすら
鉛筆を走らせる。
その手先は素早く、そして優しい。
だが
「…」
不意に少年は鉛筆を動かす手を止めた。
無感情な顔は、瞳だけが厳しく、目の前の茂みを見据えている。
その眼はナイフの様な鋭さと、深い虚無が浮かんでいた。
1つ、溜め息をついて少年は茂みに向かい口を開く。
「…居るのは解っている。殺されたくなければ出てこい」
殺気は無い。
だが、その鋭い眼が、その言葉が本気だと物語っていた。
少年はピクリとも動かず、ただ、茂みを見据えている。その姿はまるで人形の様だ。
「…」
沈黙が流れる。
と、不意に茂みの奥から声が聞こえた
「あっはっはっ!怖いねぇそんな顔で睨まないでおくれよ」
ガサガサと音をたてて茂みから現れたのは、スーツを身に纏った長身の優男だった。
優男はゆっくりと少年が座っているベンチに近付いていく。
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