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「…」
少年は無言で優男を見据える。その手には、いつの間に持ったのか短刀が握られていた。
「おやおや、物騒だねぇ」
しかし、優男は臆した様子も無く、愉快そうに笑いながら少年に近付いて行く。
「お前は、誰だ。何の用件で俺に近付いた」
尋ねると優男は、驚いた顔で目をパチクリさせて言った。
「…え?あの、ええ!?まさか、君は私の事を忘れたんじゃないだろうね?眠兎」
優男の顔は引きつっているが、まだかろうじて笑顔が浮かんでいた。
眠兎と呼ばれた少年の顔は、優男の笑顔とは対照的に強張っていた。
「…何故、俺の名を知っている?貴様、何者だ」
更に瞳の鋭さが増し、先程まで無感情だった顔には、焦りが浮かんでいた。
優男は、これ以上無いくらいに目を見開き、その後、そのままの顔ではらはらと泣き出してしまった。
「…何者だって、酷いじゃないか。私は眠兎に会うことだけを楽しみに生きてきたのに…」
約束したじゃないかと叫んでメソメソと嗚咽を漏らす。
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