第一章

5/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「だから人違…」 「違わない!」 眠兎が言い終わる前に、優男こと凪は声を荒げて言った。 その声は必死で、苦しげに顔を歪めていた。 (…話が通じない。今の所敵でもないようだし…この場合はどう対処したらいいんだ?) いくら覚えが無いといっても、そんなに必死になられると気になってしまう。 だが、結局は眠兎に覚えが無い以上、どうしようもない訳で。 結果、嫌な沈黙が流れるのだった。 沈黙に耐えかねて、もう一度人違いだと言おうとした時 《…だよ………から、……ね?》 (…?) 不意に、頭に浮かぶ誰かの会話。それは断片的で、何を話してるのかまでは聞き取れない。 だが、話してる内の1人は、紛れもなく自分の声…眠兎だった。 「…っあ」 頭に激痛が走る。頭の中ではさっき浮かんでいた会話が、まるで壊れたラジオの様にリピートしている。 (何で…急にこんな……頭が割れそうだ…) 《…ないでね》 眠兎は耐えきれず、その場に膝をついた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!