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「眠兎……眠兎!」
凪は、名を呼びながら身体を揺する。
その声は焦りで掠れていて、今にも泣き出しそうだった。
眠兎は何故凪が必死になるのか理解できなかった。
(あぁ、そうか人違いされていたんだった)
眠兎は、起き上がり、もう一度人違いだと言おうかと思ったが、今の必死さと、先程のやり取りを思い出して、無駄だと悟った。
結局の所、どうすれば良いのか解らずに、されるがままになっていた。
「眠兎っ」
呼びながら、揺する力を更に強めた。
その力が思ったより強かったので、されるがままになっている眠兎は気分が悪くなった。
「…やめろ」
言いながら眠兎は凪の腕を払い除け、上体を起こす。
チラリと凪を見遣ると、心配そうな表情で眠兎を見詰めている。
その目には、うっすらと涙が滲んでいた。
「…急に倒れちゃうから、死んじゃったのかと思った…」
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