第一章

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「眠兎……眠兎!」 凪は、名を呼びながら身体を揺する。 その声は焦りで掠れていて、今にも泣き出しそうだった。 眠兎は何故凪が必死になるのか理解できなかった。 (あぁ、そうか人違いされていたんだった) 眠兎は、起き上がり、もう一度人違いだと言おうかと思ったが、今の必死さと、先程のやり取りを思い出して、無駄だと悟った。 結局の所、どうすれば良いのか解らずに、されるがままになっていた。 「眠兎っ」 呼びながら、揺する力を更に強めた。 その力が思ったより強かったので、されるがままになっている眠兎は気分が悪くなった。 「…やめろ」 言いながら眠兎は凪の腕を払い除け、上体を起こす。 チラリと凪を見遣ると、心配そうな表情で眠兎を見詰めている。 その目には、うっすらと涙が滲んでいた。 「…急に倒れちゃうから、死んじゃったのかと思った…」
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