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間もなく、翔が現れた。
またも丸イスを私の前に持ってきて座った。
『めっちゃだるそうだったし、絶対送り貰えるなんて思ってなかった』
苦笑しながら翔サンは言った。
『だるそうで態度悪いのに、一生懸命私なんかに話しかけてくれたから』
私も苦笑しつつ、素直に言った。
翔を送りにした理由の大部分がそれ、だった。
だるそうで態度悪いのに、わざわざ私の前にまでイスを持ってきて、一生懸命話しかけてきてくれたから。
私も同じ夜の仕事をしていて思うけど、私みたいな客は面倒くさい。
私だったらものの数分でため息つきたくなるだろう。
そんな客を無理矢理にでも自分のペースに持ってきて、楽しませることができる翔のことをすごいと思った。
私なんてまだまだだな、と思ってしまった。
『よかったらメアド教えて?』
翔が言った。
『別にいいけど、私行かないと思うよ?』
『好きにすればいいと思うよ~♪』
携帯いじりながら返事する。
『ほいっ、赤外線♪』
携帯を向けてきた。
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