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バッグから携帯を取り出して、赤外線で送れるようにいじる。
赤外線、完了。
『後で俺のメールで送っとくわ~♪』
翔は携帯をスーツの胸ポケットにしまった。
そこでまみちゃんに
『あれ?送りは?』
と向き直る翔。
『まみはいいや~。他店に担当いるからさ』
愛想よくまみちゃんは断った。
『適当に指名してもいいよ?葵サンとかカッコよかったっしょ?』
優しく翔も言うけどひかない。
『大丈夫。ごめんね~』
そう言いながら、まみちゃんは席を立った。
堅いなぁ。
もっと気楽に選んでおけばいいのに。
『じゃあでよっか?荷物持つよ』
そう言って私のバッグに手をかけた。
『大丈夫だよ?酔ってないし』
慌ててバッグを持った。
『持たせて?』
翔は、じっと目を見て言った。
そう言われたら断る理由がない…
バッグを持ち上げる翔を黙って見つめることしかできなかった。
バッグの先にさっきの翔の目を思い出していた。
真っ直ぐな黒い目を。
『また明日ね♪』
まみちゃんの声で気付けば、翔は私のバッグを肩にかけ、数歩先をまみちゃんと話しながら歩いていた。
『ミライ!今日はありがとね!春もまた明日っ!!』
席に座っている2人に声をかけ、慌てて追いかけた。
『またね~★』
『ありがとうございましたー!!』
春と敏也くん、もう1人のホスト声を背中で受け止め、私は入り口までの短い道程を急いだ。
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