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―1961年8月―
「…なんだ、これは」
目の前にある壁。
それは冷戦下、東ドイツが東ドイツに囲まれた自由な地域である西ドイツ側のベルリンを囲むように作った壁だった。
「おーい、ルッツー」
壁の前で愕然としているドイツ(西ドイツ)を壁の向こうから呼ぶのは兄であるプロイセンもとい東ドイツ。
「兄さんか?」
「そうだぜ、こんなにかっこいい声の正体は俺様だけだぜー」
「そんなことより、」
そんなことって言うな! とすぐに壁越しに声が聞こえたが弟の方はスルーして話を続けた。
「この壁は一体なんだ?」
「壁は壁だ、俺様のほうにお前が攻撃してこないよーに――ってのは日本で言う建前で本音はお前の方に逃亡するやつが多いもんだから上司がつくらせたんだよ。全く、疲れたんだぜ」
「どこまで続いているんだ?」
「さっきから質問ばっかりだな。あー、簡単に説明するとこの壁は西ドイツ側のベルリンを囲んでいる。そして西に繋がる場所には検問を設けた。あと、壁と壁の間に少し空間があるから逃亡は大変なんだよ」
「そうな……のか」
「それにしてもあっちーな……あっ、忘れてた。上司に伝えておいてくれ。もう、支援はいらない。俺達は俺達でなんとかやる。じゃ、ロシアの奴らが待ってるから行くな」
「おいっ、兄さん! どういう事だ」
「どうもこうも、こういう事」
(なんだ……それは)
「何年かすればまた会えるさ。まさか、大だの小だの少なからず周りとドイツ統一を掲げて生きてきたこの俺様が東ドイツになるだなんて思わなかったが……ま、ハランバンジョーってやつだな」
それじゃあな、と一声。
兄は声を残し、足音をたて去っていった。
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