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私を叩き、私を踏む少女には目がなかった。眼球自体がないらしい。
あるべきところは暗く、瞼は窪んでいた。
人は色が分かる。視力を失った人は、それから先ずっと灰色の世界になるらしい。
だが生まれつき目のない少女はそれすら分からない。
それで悲しむこともないが。
悲しむこともなく毎日私を叩き、私を踏む。
少女と私は会話していた。
今日は花瓶を割ってママに怒られた。パパに叩かれた。
今日はスープをこぼしてママに怒られた。パパに叩かれた。
今日はママに叩かれた。パパにも叩かれた。
今日も少女は私を叩き、私を踏む。
ただ一つの感情で。
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