始まりは唐突で

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「…そ、そうだケド。……アナタもそれ背負ってるし、同じでしょう?」 「学生っていうのが一緒なだけで、貴方と同じにされるだなんて少し気分が悪いですぅ」 「……はいぃ…?」 「声は大きいのに耳悪いんですかぁ…、あ、でも流石に頭は大丈夫ですよねぇ?」 「……ぶっ」  何なんだこの小学生は。  勇慧は口を押さえて笑い堪える朔夜を一度睨み付けてから、引き攣る顔をどうにか留めて少女を見下ろした。今時の小学生はこんなにも生意気なものなのだろうか。  反論を述べ様と勇慧は口を開くが、その時タイミング良く信号機の赤色は消え、少女が小声で呟いた。 「8時13分、まぁギリギリですかねぇ」  「8時13分!?」声を荒げ見事同時に答える二人。  青へ変わった信号を確認する間もなく、勇慧と朔夜は顔を青ざめさせた。 「こんなちんたら歩いてる場合じゃねーって、ヤベーよ遅刻!」 「ああもう最悪…。それじゃあ、毒舌少女も遅刻しない様にね!さよならっ」  二人は緊迫化した状況でそう言い放ち、間に合うか間に合わないか募る焦りを、踏み締める力に変えて走り抜く。  勇慧が朝寝坊をした理由、朔夜が出会った不思議な女性、時間通り来なかった幼なじみなど、異変に気付く要素は多々あったものの、その疑問はまだ、二人の中の片隅に存在するだけに過ぎない。  毒舌少女、と吐かれた言葉に、少女は眉を寄せて二つの後ろ姿を眺めているのであった。  目的地の場所は分かっているため、その足に迷いはない。  先程の横断歩道を渡って直ぐ、真っ正面には通行を邪魔するくらいの坂道と土手に川。その横には、左右分かれた通常の歩行道路。  数段しかない坂道の階段を上がった所で、川の向こうに存在する緑に囲まれた学校を初めて目にする事が出来るのだ。  特別遠い訳ではないが、そんな川を突っ切る為に存在する橋を少なからず渡らなければいけない。  面倒な事に変わりはないけれど、育ち盛りな自分達にとってはちょうど良いくらいなのかも知れない。  朔夜がそんな事を考えながら階段を駆け上がっていると、いつもと異なった状況の所為なのか、やはり普段なら見掛けない筈の人影が二つ、妙なテンションで怪しい事きまわりない人物が橋の上を歩いている事に気が付いた。  
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