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──辺り一面に拡がる
紅、一色のみの世界。
周りを炎が包み込み、周囲の酸素をひたすら燃やし尽くさんと、まるで壁の様に高く燃えさかる。
───その中心に
俺とヤツは居た。
ヤツは1人腕を組み冷めた目で俺を見下し
俺は肉塊と化した男女2人の隣で、地にへばり付いたみっともない体勢で、それでも気持ちで負けたらいけないと、ヤツを睨み付けていた。
「───つまらんな
貴様の実力がこの程度だとは………」
失望の眼差し。
俺を見るヤツの眼は、そう例えるには相応だった。
「───貴様に選択権をやろう。
ソコの死体と同じ様に只の肉塊と化すか……
瀕死の状態で尚、私に牙を向けるか……
今日まで私を楽しませてくれた礼だ────選ぶといい」
「なん───だと?」
完全に…俺はヤツに見下されている。
ちくしょう……ふざけるな!
どちらの選択肢を選んでも結果は同じ。
違うとしたら、俺の死が早まるかどうかでしかない。
それを……選べというのか!
「ぐ──ぬぉ───ッ!!」
「!───ほぅ…」
既にこの身体は満身創痍
抵抗するのはおろか、立ち上がるだけに必要な力すら、とうに失せている。
────だが
このままでは…終われない。
死ぬ運命が変わらないとしても…ナメられたまま死ぬ訳にはいかない!
「ガア゛ア゛ァ゛ァ゛────ッッ!」
傷だらけのこの身体を突き動かすは己が精神。
死ぬ運命が変わらぬならば、せめて一矢ヤツに報いてやる、その想いのみ。
「…その身体で立ち上がる、か」
「フゥ゛ッ!───グウゥ゛ッ!!」
「それにその顔……
そうか、お前はソレを選択したか」
ヤツが何を言ってるのか、そんなもん聞こえない。
否───聞く必要無い。
ずり、ずり、と引き摺った音を鳴らし一歩ずつ、ヤツが居る場所へ───俺は歩く。
「…面白い。
ならば、その選択をした貴様に猶予をやろう───…」
───三年。
三年後、この世界と同質の並行時間軸へ、再びお前を喚んでやる。
それまでに、強くなるのだな───…
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