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江川将巳(エガワマサミ)は高校2年になったばかり。
新学期を迎えて2週間ほどたったある日、突然両親を交通事故で亡くした。
両親は親の反対を押し切って結婚し、家を出たらしく、親戚とも連絡をずっと取っていなかった。
それがこんなことになってしまって、会ったこともない親戚へ連絡したりと、将巳は悲しむ間もなかった。
幸い、初めて会う父親の弟である叔父は想像していたよりも遥かに優しい人で、身寄りのなくなった将巳とその弟の小学3年の克音(カツネ)を快く引き取ってくれた。
新しい学年になったばかりの二人だったが転校を余儀なくされた。
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将巳はぼんやりと、叔父の車内から外を眺めていた。
今まで暮らしていた都会を離れ、外には田畑が広がって。
空は夕焼けで赤く染まっている。
トン、と右腕に重みを感じて視線をやると、克音が寝息をたてていた。
事故の後は毎晩泣いて大変だったが、何日かたった頃には小さいながらにも事実を受け止め、明るくいようと頑張っている。
小学3年生で両親を亡くすというのはまだまだ辛いだろう。
克音の寝顔を見てふっと表情を緩めた。
それと同時にゆっくり車が停まった。
「着いたよ」
叔父の声に我にかえる。
隣の克音を起こしながらうなずいた。
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