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壊れ物でも扱うようなおっかなびっくりなその仕種に、少女は僅かに驚いたように目を見開いた後、サーフィアに向かって微笑み返した。
「……すみません、レディ」
サーフィアが戸惑うような表情を浮かべて、少女に謝罪する。
「どうして謝るの?」
「私のような冷たい手で撫でられても、嬉しくないでしょう? 貴方に必要なのは私のような機械の手ではなくて、温かな御両親の手なのですから」
少女が滅多に見舞いに来る事のない両親の訪れを、何よりも楽しみにしている事をサーフィアは知っていた。少女が物心着いた時からずっと見守って来たのだから。
我侭を言いたいのをぐっと堪えて、笑ってみせている事も知っている。
自分の病がどれだけ周囲の気遣いを必要とするか知っていて、看護婦達への感謝も忘れない。
動けない分、外へ出られない分、少女はヴィデオやデジタルブックから知識を得、いつの間にかひどく大人びてしまった。
我侭を言ったり、泣いて大人達を困らせてみたり、周囲の迷惑になる事を自分に一切禁じてしまった少女。
そのいじらしい程に頑なな強さを持った少女を、サーフィアは誇りに思い、そしておそらくは――愛しいとさえ思っているのだろう。
彼にはそう感じる事ができなかったけれど。彼にはそのプログラムが組み込まれていないから。
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