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厳重に管理された白い扉を何枚もくぐり抜け、辿り着いた最後の扉の向こうで、1人の男が少女を待っていた。
「あぁ、サンドラ!」
扉を開けて入って来た少女の姿を認めると、男は嬉しそうに両手を広げて少女を己の胸に抱き止めた。
落ち着いた色調の、けれどどこにでもあるありふれた家具に囲まれた居間。穏やかな陽射しが窓から差し込み、窓の外には手入れの行き届いた芝生の庭が広がっている。
別段珍しくもない、どこにでもある一般的な家庭。
そこで少女を待っていたのは、こげ茶の髪に僅かに白いものが混じり始めた、中年の男。深い緑の瞳が少女のそれと良く似ていて、おぼろげながら血の繋がりを感じさせる。
少女の年の頃は11、12歳だろうか。ほっそりとした身体に小花を散らしたプリント地のワンピースをまとい、栗色の髪をポニーテールにして、はにかむように男に微笑みかけた。
まだ成長しきっていない身体は女性特有の丸みを持っておらず、少女の手脚は少年のそれと殆ど変わりない。
男が強い抱擁をようやく解くと、少女は男を見上げて可憐な笑みを浮かべ、言った。
「ただいま、パパ」
そのたった一言に、男はころりと破顔する。
「元気だったかい、サンドラ。顔を良く見せておくれ。何しろ3ヶ月ぶりなんだから」
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