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厳重に管理された白い扉を何枚も抜け、辿り着いた最後の扉の向こうで、1人の女が少年を待っていた。
「あぁ、アレックス!」
扉を押し開けて細っこい少年が姿を現すと、女は少年に駆け寄ってその小さな身体に抱き付いた。
白いレースのカーテンが揺れる、大きな窓のある日当たりのいい部屋。窓の外ではペンキで白く塗られたテラスが、陽射しの中で眩しい程に輝いて見える。
眼下に広がっているのは玩具のような白い壁の街並みと、見事なコントラストを織り成す紺碧の海。地中海沿岸の小さな街を思わせる、眩しい陽の光に満ちた絵のように美しい情景。
その部屋で少年を待っていたのは、金髪をゆったりと結い上げた中年の女。紫がかった赤茶の瞳が印象的で、少年のそれと良く似ていた。
少年の年の頃は11、12歳。
まだ伸び切っていない少年特有の細くて青臭い体型と、利発そうな瞳。少しぼさぼさになった髪は、海風に吹かれてここまで駆けて来た所為だろうか。
女の首筋に抱き付いて、音を立てて頬にキスを落とした少年は、腕を解くと女に向かって天使の微笑を向けた。
「ただいま、ママ」
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