紫水晶~Amethyst~

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 病院ってのは何はさて置き退屈で、真っ白な壁に囲まれた病室はトコトン色気がなくて、同室の連中は他人の見舞いの品にも平気で手を付けるし、担当看護婦は所謂ベテランのおばちゃんで、看護士に至ってはごつくてむさい男どころかロボットだったりする。  何一つ楽しい事なんてある筈がない、病院暮らし。  その原因を作ったのは自分自身だから、誰にも文句が言えないところが更に虚しさと寂しさを募らせる。  僕は自損事故で両脚を複雑骨折し、入院中なのだ。  最近流行のエアカーを手動で操り無茶な走らせ方を楽しむゲームを街中でやっていて、操作を誤りビルに激突した。前半分が殆ど潰れたエアカーに挟まれ、両脚の骨はぐしゃぐしゃだった。  全治2ヵ月。  それでも自損だった事を幸いと思わなければ。これがもし人身事故だったら、今頃警察病院にお世話になっていただろうから。  時折見舞いに訪れる悪友達は、見舞いの品と外界の話を持って来てくれるが、結局は僕のドジを笑いたいが為にやって来るのであって。  毎回毎回散々小突かれ、笑い者にされていては、流石の僕も疲労困憊と言うものだ。  そんな風にして、悪友と言う名の嵐が去った後、疲れ切ってただひたすら夕食のカートを待ちわびていた僕の前に、彼女は突然現れた。
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