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「ジャン=ピエール・ノリスさん?」
聞き慣れない若い女の声に、顔を上げた僕は一瞬我が目を疑った。
そこに立っていたのは初めて見る若い看護婦。
他の看護婦達と同じに淡いピンク色の白衣を身に着け、髪をアップにした上にちょこんとナース帽をのっけている。
しかし僕の目を惹いたのはそんなありきたりなナースの恰好じゃない。
綺麗な――本当にそうとしか言い様のない、宝石のように澄んだ菫(すみれ)色の瞳。
瞳の色に合わせたのだろうか。元はプラチナブロンドと思われる髪には、見る方向によってキラキラ輝く淡い紫色のカラーが施されている。
抜けるように白い肌とあいまってひどく浮世離れして見えて、まるで人形か何かのように綺麗だった。
「ノリスさん?」
返事もせず、ぼーっと見惚れている僕に、彼女はちょっと小首を傾げてもう一度声を掛けた。
その仕種がやたらと可愛らしい。年は20歳前後だと思うけど、愛らしいとさえ言っていいくらいだ。
「あ……、はっ、はいっ!」
慌てて返事をして居住まいを正した僕に、彼女はにっこり微笑んで言った。
「先程、前任者から引継ぎを済ませ、今から貴方の担当になりました、アメリアです。よろしくお願いします。退院まで一緒に頑張りましょうね」
白衣の天使(実際はピンクだけど)と言う言葉がこれ程ぴったり当てはまる女(ひと)が、本当にいるなんて思いもしなかった。
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