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やがて退院する者が1人2人と現れ、その全員が、彼女に告白してきっぱりフラれたと言う噂が僕達の間に広まった。
誰もがしめた、と思ったね。
彼女にはちゃあんと本命がいて、その相手から告白されるのを待っているんだと。
そしてその相手は間違いなく自分だと、皆が皆確信していた。
誰も彼女の本命が病院外にいるとか、既に結婚してるとか、あるいは婚約者がいるとか考えもしなかったあたりが、周りが何も見えてない証拠だ。
それからは退院前の告白合戦となった。
退院が決まった男達は、彼女を人目のない中庭や屋上に誘い出し、告白するのがもはや決り事のようになっていった。
そして言うまでもなく、告白した全員が見事に玉砕したのだった。
やがて僕に順番が回ってきた。
至極真面目に、模範的入院患者をやっていた僕は、思ったより早く退院の日を迎える事ができた。
骨折の状態からすれば、驚異的と言っていい回復力。これも愛のなせるワザ。
担当医がそれを告げた時、確かに嬉しかったけど、それと同時にそれは彼女との別れの日も意味していて、素直に喜ぶ事ができなかった。
いや、勿論、このまま別れてしまう気なんて毛頭なかったけれど。
そしてその日の午後。
僕はかねてからの予定通り、彼女を屋上に呼び出し、2人きりになった。
担当の誰かが退院する度に呼び出されては告白されて、きっぱり拒絶している彼女。
いい加減、告白される事にも断わる事にも慣れているだろうし、飽きてもいるだろう。もしかしたら、本命以外の男に言い寄られる事に、腹を立てているかもしれない。
もしそうだとしたら。
可哀想な彼女の為に、僕はとびっきりの告白をしよう。
彼女をびっくりさせて、なおかつ大喜びさせるようなとびっきりの告白を。
だけど。
屋上に現れた彼女は。
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