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シティ特有の機械臭い錆びたような匂いの風が吹き、雲ひとつない青空の下、遠くを走るエアカーの噴出音だけが微かに耳に届くその場所で。
「あなたも私が『好き』だと告白する為に、ここに私を呼んだのですか?」
いきなりの先制攻撃に、僕は言葉をなくした。
なんて言ってもやっぱり自信があったし。
彼女が僕に向ける微笑みは、ただの患者と看護婦のそれじゃなくて、心が通い合った者同士のそれだと確信していたし。
今まで彼女が他の連中を悉くフッていたのは僕の為だと――やっぱり心の片隅では思っていたし。
なのにこの台詞はないんじゃないか?
「どうなんですか?」
いつもと変わらず穏やかな口調で、それでいて優しい白衣の天使とはどこか違う雰囲気で、彼女が返答を求める。
「いや……確かに、そうなんだけど……」
僕は歯切れ悪く頷くしかない。
彼女は「やっぱり」と言う顔をして、それから困ったような表情を見せた。
「あなた方が何をどう勘違いしているのかよく判りませんが」
勘違いも何も、君のその微笑みはホンモノだろう? 僕にだけ見せてくれた優しさは!?
「私はあなた方の言う『好き』には応える事ができません」
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