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「お星さま…見えないね…兄さん…。」
しょんぼりと黒づくめの少年が呟く。オレの弟・クロだ。
何故だか今日は雲が異常なほど空を覆っている。
あぁ 気持ちが悪い。
多分…人間のせいだ。
クロはただただ空を見上げる。
なんだか早く家に帰りたくなった。
「クロ」
「なぁに?」
「まだここにいるのか?」
「いちゃダメ?」
「いても今日は星は見えないぜ?」
「でも、」
「じゃあ、オレは先に家に戻るぜ?」
可愛い弟の意見を押してでも帰りたかった。
弟は寂しそうな声で「ぅん…」と呟いた。
少し 寒そうだった。
オレは力を使い毛布を出し、クロにかけてやった。
オレの気持ちのせいなのか、それはかなり大きい。
そして、寒くて早く帰ってきますようにと願いを込めたせいなのか、少し薄い。
そんなオレの気持ちなど微塵も感じることなく、鈍感な弟は毛布にくるまり
「ぅん、わかった!」などと言ってオレに手を振る。
帰ってきたとき冷えているだろうその体を温めてやろう、とシチューを用意することに決め、オレは家に帰った。
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