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「黒、オレはそろそろ行かなきゃ…これからもシロには内緒だよ?」
昼の陽だまりが黒とシロの頬で橙に変わる。
それはお昼寝のおしまいの合図。
そしてその空は夕を迎える。
シロと黒の二人が起きるとすでにアルツの姿は無かった。
「おはよう、クロ」
「おはよう…兄さん」
「おはよう、影」
「おはようございます…、マスター…」
目覚めに二人とシロの影の三人がおはようの声かけをする。
夕日が目に染みるのか、影の目には涙が見えた。
主はそれに気づかない。
「そろそろ夕ご飯にしような…クロ」
「うん…兄さん」
ゆっくりと部屋を抜け台所に向かう二人を追いかけずに、そのまま影は部屋に残った。
あの夜の数日後のマスターの言葉を思い出したからである。
―影はオレの味方なのか?―
涙がまた零れる。
「主が…どれほどの罪を犯したとしたも、…私はあなたの従者です…味方でないはずが……ありませ…ん………クロ様の件も…同様…で……」
従者は最後まで言い切ることができなかった。
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