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7月の18時といえば明るい時間帯だが、今日ばかりは灰色の雲が街を薄闇に染めた。
傘をさしている人達は家路を急ぎ、祭を足速に追く。
一人の男が祭りの脇を駆け抜ける際、水溜まりの泥水を盛大に跳ねあげた。
「ぎゃっ! ちょっと! んもう~……」
少し小太りで裾の破れたジーンズをはいた男はチラリと祭を見るも、謝りもせずに住宅街の角を曲がって行った。
(なにあれ、ムカつくーっ!)
男が曲がった方を睨みながら歩くと看板が目に入った。
”この先、痴漢注意 ”
そういえば女子高生強姦事件が起きたのはこの近くだ。
すっかり人がいなくなり、まるで真夜中の様な道に不安が倍増していく。
「雨もふってるし……さすがに痴漢……ないよね。あ、前から人が来た」
人影を見つけホッとする。
黒い傘はどんどん近づき、祭りの横を通り抜ける。
「え……?」
すれ違いざま、見覚えのあるジーンズにドキリとして足がとまった。
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