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もう夕方になった。
俺がこの娘いつまで居るきなんだろ、とか考えていると。
「……じゃあ、遥太君……ワタクシ、そろそろおいとまさせて頂きますわ」
あの子が突然立ち上がってそう口に出した。
「えっ? 帰るの?」
「ハイ、ごめんなさいね。ノリで家に上がっちゃったりして……けど今日は本当に楽しかったですわ……有り難うごさいました。」
俺は急にあの彼女がそんなことを言いだすもんだから、ちょっと驚いて、ノリなんですか?と疑問を投げかけずに、
「イ、イヤ謝ることはないよ。……こっちも楽しかったし……」
「ウフフ……やっぱり遥太君は優しいのですわ……。あのときのまんま……です」
「あ、そのことなんだけど。俺、本当に何一つ覚えてないんだ、君のこと。だから……悪いけど今話してくれない?」
すると、彼女少し顔を俯かせた後、またこっちに目を向け、
「ハイ。でも、ワタクシとしては遥太君自身で思い出して欲しいんです。……もしそれで遥太君が何も思い出さなかったら、遥太君にとっては所詮そんなこと。ワタクシはあのときの約束を忘れます。でも思い出したら約束通り……結婚してもらいますわよ?」
そう言うと、ニッコリと、俺に笑みを向けた。
俺は、最初は変なことを言い出す娘だと彼女のことを完全に疑っていたが、今の話しと、彼女の……どことなく悲しい笑みからは、嘘を口にしている気配はなかった。
だから彼女のことを思い出せない自分に、嫌気がさした。
「……では。遥太君! ご機嫌よう! また明日学校で、ですわ!」
「あ……うん! バイバイ! また明日!」
お互いに別れの挨拶をし、麗奈さんがいざ俺の部屋からでようとしたときであった。
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