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黒き深い闇に赤い雫が落ちた。
それを静かに見ていた少女。
闇に同化している長い髪。
この深い闇の中でも一際目立つ金色の瞳。
その瞳には深い哀しみと深い憎しみが渦巻いていた。
少女の知らぬ場所でついに解かれてしまった邪を呼ぶ存在。
邪は静かに少女を見下ろしていた。
邪を滅するは少女のみ。
少女を滅するは邪のみ。
互いが互いを傷つけ、そしてどちらかが滅びなければならなかった。
―――それは必然。
産まれる以前より帝天なるものに定められていたモノ。
少女は何時しか力尽き、その場にしゃがみ込んだ。
泣くことは許されず、その定めからも逃げられない。
気付けば時は逆上っていた。
それは帝天なるものの仕業か。
それとも“神為らざる”ものの仕業か。
けれど少女の運命はこの時、止まっていた。
小さな砂時計は時を知る術を忘れ、時を司る存在すら姿を消した。
そして瞳に新たな決意を宿し、少女は歩み始める。
それが破滅へと向っていないことを祈りながら―――。
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