第壱章

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目が覚めると辺りはまだ真っ黒だった。 「なんだ……まだ夜か…」 上半身を起こして改めて辺りを見渡す。 ここはどうやら草原、のようだった。 辺りは暗くて、勿論明かりもない。 唯一明かりとなるのは星と月、だろうか。 「よっと」 そう言って立ち上がり、土を払う。 夜風は少し冷たい。 そんなことを思いながら辺りを歩いてみることにした。 けれどやはり暗闇の中ではここが何処なのかハッキリとはわからなかった。 しかし、こんなに暗くてもわかることがひとつだけあった。 「――血生臭い」 顔をしかめ、袖で口元を覆うほどの臭いであった。 まるで戦場―――。 そんな考えが頭を過ぎった時、不意に人の気配がした。 「チッ……」 舌打ちと共に、刀が抜かれた。 それを気配で感じ取った少女は危険を感じ、足を止めて気配のする方に目を凝らした。  
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