片想愛

18/20
前へ
/182ページ
次へ
由貴くんは傷ついた顔をしている。 私に傷ついているのか、私を傷つけていたことに気がついて傷ついているのか。 分からないけれど、無性に腹が立った。 「傷ついた顔しないで。由貴くんに謝って欲しいとも思わない。だから私と別れて下さい」 「美帆、俺…美帆が好きだから……」 「そんなのいらない。沙織さんと幸せになりなよ。私はもう、良いや」 笑いながら丸イスから立ち上がる。 今になって涙が出そうになった。 別れてと言っているのは私なのに、フラれている気分だ。 「美帆、ごめん」 「謝らないで。でもね、覚えてて。私は由貴くんが大好きだったよ」 「美帆…」 「じゃ、もう行くね。由貴くん、早く良くなってね」 「美帆!!」 呼ばれたので振り返る。 由貴くんはまっすぐに私を見ていた。 「3年間も、俺なんかに付き合ってくれてありがとう」 「うん」 「美帆、ありがとう」 「…うん」 進行方向へ向き直る。 泣かない。 そして私はもう2度と由貴くんを瞳に映さない。 最後に「バイバイ」となるべく明るく言った。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加