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由貴くんは傷ついた顔をしている。
私に傷ついているのか、私を傷つけていたことに気がついて傷ついているのか。
分からないけれど、無性に腹が立った。
「傷ついた顔しないで。由貴くんに謝って欲しいとも思わない。だから私と別れて下さい」
「美帆、俺…美帆が好きだから……」
「そんなのいらない。沙織さんと幸せになりなよ。私はもう、良いや」
笑いながら丸イスから立ち上がる。
今になって涙が出そうになった。
別れてと言っているのは私なのに、フラれている気分だ。
「美帆、ごめん」
「謝らないで。でもね、覚えてて。私は由貴くんが大好きだったよ」
「美帆…」
「じゃ、もう行くね。由貴くん、早く良くなってね」
「美帆!!」
呼ばれたので振り返る。
由貴くんはまっすぐに私を見ていた。
「3年間も、俺なんかに付き合ってくれてありがとう」
「うん」
「美帆、ありがとう」
「…うん」
進行方向へ向き直る。
泣かない。
そして私はもう2度と由貴くんを瞳に映さない。
最後に「バイバイ」となるべく明るく言った。
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