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それから数日後。
私たちはお父様から本格的にOKを貰い、水野の自宅で同棲を始めた。
片付けも済み、私も住み慣れて来ている。
「水野、これ上にあげてもらえる?」
「ん?あぁ、貸して」
「ありがとう」
付き合い始めて気が付いたのは、水野はわりと私を甘やかしてくれているということ。
なんでも一緒にしてくれるし、頼りにもなる。
優しいしかっこいい。
最高の彼氏だと思う。
「あ、水野…」
「てかさ」
「え、何?」
話しの腰を折るように、水野が私の話しを止める。
「夏芽、俺の下の名前知ってる?」
「…当たり前じゃない」
「じゃあ、呼んでよ」
「なんで?」
「名前、呼び捨てにされたいから」
ニコッと水野が笑いかけて来る。
私もニコッと笑い返してから顔を背けた。
「今さら恥ずかしいし」
「良いから、早く」
今さら、下の名前知らないなんて言えない。
書類では見たことがある。
けれど難しい漢字で読めなくて、下の名前を知るのを10年以上前に諦めたなんて言えない。
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