恋々雨

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「…えっと、」 「知らないんだろ?」 「知らないっていうか、読めなくて。水野は水野だし」 「ひろたか。寛尊っていうの」 水野は私の頭を撫でてくれる。 「寛尊…」 「そう。これからは名前で呼んでくれる?」 「ええ、分かったわ」 お返しに水野に抱き着く。 私の恋の土砂降りは、やっとやんでくれた。 また降り始めたり、土砂降りになったりするかもしれない。 けれど、私はきっと大丈夫だ。 だって側には水野…じゃなくて、寛尊がいるし。 雨が降ったあとの空気はとても清々しくてキレイだ。 だから、深呼吸したくなる。 心の中が土砂降りだった私。 晴れ渡った今、深呼吸をしてみる。 隣りには誰よりも、何よりも愛しい人がいてくれる。 恋々雨 -renrenu- 【完】
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