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病室に戻るともうあの人はいなくて、私の手は冷たくなって真っ白だった。
「美帆、手…」
「手?」
由貴くんにギュッと手を握られる。
「うわっ、冷たっ。どうしたの?」
「え?あ…ちょっと」
由貴くんは私の一つ年上の先輩。
当時、高校3年の由貴くんに何故か出会ってしまった高校2年生の私。
出会わなければ良かったと、本気で思う。
「またボーッとしてた?」
私に優しい由貴くん。
由貴くんに優しくできない私。
それなのに愛して欲しいと思っている。
矛盾だらけの関係だ。
「手、洗ってる途中で考え事しちゃって」
「美帆はしっかりしてんのか抜けてんのか分かんないな」
ははっ、と笑う馬鹿な由貴くんを見てると私も笑ってしまった。
私と由貴くんはキスもしたことがない。
唯一の触れ合いはこうして、手を握り合うこと。
「じゃ、そろそろ帰るね。明日も来るから」
「あ、毎日来てくれるの?」
「…迷惑?」
それは余りにも無意識に出た言葉で、言った自分が一番驚いた。
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