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「沙織さんと付き合ってたのが1年半。私が3年。ずっとずっと我慢してたのに、今さら引けないよ」
「3年間、あの人がお前を思ってくれたことあんのかよ」
晴矢は立ち上がり、私の目の前にしゃがみ込んだ。
「ないよっ、ないけど。離れたくないの。由貴くんが好きなの…。だから沙織さんとのこと知らないふりした」
「強がりで?」
「それでも側にいたいと思ったの」
何でも良かった。
ただ大好きな由貴くんの側にいたかっただけだ。
「もう別れろよ」
晴矢のその言葉は、まるで呪文のように私に響く。
「私と由貴くんが別れたら、きっと2人は付き合うよ。邪魔者がいなくなって、喜ぶんだよ」
「美帆…」
「由貴くんに、好きになってもらいたかった」
晴矢がまた頭を撫でてくれる。
今日の晴矢は、慰めるという行為を違和感なくしてくれている。
「3年間も頑張ったならもう良いだろ」
「……そうだね」
「美帆?」
「分かってたんだよ。うん…、別れる」
その言葉はすんなりと私から出て行った。
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