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「マフラー?」
「これから寒くなるからプレゼント。…最後のプレゼント」
「最後…?」
「分かってるでしょ?」
おどけて、笑ってみせる。
結局私が選んだのは強がることだった。
「私はもう由貴くんとは付き合えない。手を繋ぐだけじゃなくて、抱きしめて欲しかった」
「…美帆?」
「キスして欲しかった。……愛して欲しかった」
不思議と涙は出なかった。
私はベッドの横の丸イスに座る。
「沙織さんとのことも知ってた。でも知らないふりすれば、いつかは由貴くんがこっちを向いてくれるかも知れないって…。そんなことなかったけど」
なんとなく3年間という年月のことを考え、思い出して笑えた。
「3年も付き合ってたのに、何の思い出もないよ。ただずっと苦しかったことしか覚えてない」
「美帆、俺…」
「触らないでっ!!」
由貴くんが私に伸ばした手を払いのける。
触られたくないと、初めて思った。
「由貴くんは汚いよ。けど、そんな由貴くんに愛されたくて仕方なかった私はもっと汚い」
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