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その時七海ははっと気が付いた。
(お弁当置いてきた…)
今朝、七海が早起きして作ったお弁当。
七海の好物である卵焼きも入っているのに…
そんなことはどうでもいいのだが、それが見つかってしまったら、七海がここにいることも多分ばれてしまう。
ましてや、あのテニス部だ。
関わるのは遠慮しておきたい。
ただでさえ、女子に嫉まれる存在の七海である。
白く華奢な手足、ふわふわとしたクリーム色の髪、身長はそれほど高くはないが、見上げられれば誰でも多少なりとはドキッとするであろう。
そんな七海はクラスの三分の一の男子に好かれているのだから、女子に嫉まれてもおかしくない。
女子の数々の嫌がらせから守ってくれているが友人の凛々子なのだが…
テニス部には関わりたくない。
でもお弁当は食べたい。
そんな思いがぐるぐると駆け回る。
結果、様子見という判断が下された。
「お、お弁当っ」
その言葉にピクッと反応した。
切原赤也の声だ。
「誰のだよぃ?」
「わかんねぇっス。えーと……神山七…海…?」
その言葉にさらにビクビクッと反応した。
どうしよう、どうしよう、と心の中で念仏のように唱えた直後、
「ま、いーや、食べていいんスかね?」
とノーテンキな声が聞こえてきた。
七海が呆然とする中、切原赤也はお弁当の蓋を開けて、こともあろうに七海の箸で食べようとするのだ。
それも、真っ先に卵焼きを
「だめーっ!」
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