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しばらくの沈黙があった。
特に何をしたわけでもなく、ただお茶を差し出しただけで七海は何もしていない。
やがて、重い空気に堪えられなくなったのか、赤也が重々しく口を開く。
「あー…わ、悪かったな、弁当勝手に食っちまって……」
「い、いえ、私の大好きな卵焼きを食べた事なんて気にしてませんからっ」
申し訳なさそうに言う赤也に七海は慌てて罪悪感の残る言い方をする。
それも無自覚で。
うっ、と顔を青くする赤也。
また沈黙が訪れる。
赤也以外のテニス部メンバーは静かに昼食を取っていた。
途端、赤也のお腹がぐぅとなった。
「あ…」小さく呟くとお腹を摩り、昼食をどうしようかと考える。
ちなみに七海の弁当は卵焼きしか食べていなかったため、七海に返したのである。
「………」
テニス部一同、赤也に哀れみの目を向ける。
「あ、あの……これ…よかったら…」
ふと七海が小さく呟きながら弁当を差し出した。
「え?いや、いいぜっ」
「いえ、そんなこと言わずに…」
必死に断る赤也と遠慮しないでという七海。
そんな様子を見て赤也はつい、小さく笑ってしまった。
「……?」
七海は不思議そうにしている。
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