第5章

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次に目を覚ました時、僕はベッドに寝かされていた。 壁も天井も白くて、病院のようだった。 動かしづらいと思ったら、左腕には点滴をされていた。 右手には、誰かの温もりを感じた。 「樹くん?」 僕の手を握っていたのは、確かに樹くんだった。 「ああ、巴。よかった…」 樹くんは泣きそうな顔をしていた。 「巴…。ごめんなさい。ゆっくり休んで下さい。僕はこれで…」 樹くんは、僕の手を離すと、ぺこっと頭を下げて行ってしまった。 …冷たいなぁ。 一瞬思った。 でも、よく考えてみれば、恐らくまだ混乱しているであろう僕に「ゆっくり一人で考える時間を」という、樹くんの優しさなのかなとも思った。 樹くんとほぼすれ違いで、龍司さんが来た。 単さんも一緒に。 「心配かけて、ごめんなさい…」 「ごめんな、巴。気付いてやれなかった」 「こちらこそ…ごめんなさい」 「大したことなくてよかった」 龍司さんが、あの時みたいに頭を撫でてくれた。 「巴、大丈夫だよ。明日には帰れるからね。心配しなくていいから。ただ…精神的な問題を解消しないとね」 単さんが、優しく言った。 「ごめんね。巴だって一緒に働いてるんだから、ちゃんと話しておかなきゃいけなかったね」 単さんはしゃがんで、ベッドに寝たままの僕と目線を合わせて話してくれていた。
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