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引き上げられた後、視界が隠れてようやく気づいた。
逆行で気づかなかったが、私の視界は髪でチラチラと隠れてはいたが、かなり鮮明になっていた。
それはつまり、私の瞳が、その男の子に見えたという事。
――見られた…っ!
男の子がこちらを見た事で、私は身体に緊張を走らせる。
見られた。見られたのだ。
私の最大のコンプレックス…いや、弱点を。
身構えていると、男の子はこちらを見たまま微笑んだ。嘲笑とは少し違う気がする。
「綺麗な眼だな」
……え?
今なんて?
「なんでそんな綺麗な眼を隠してるんだよ」
綺麗?私の眼が?怖くないの?
訊ねたくても私の口はパクパクと開閉を繰り返すだけで声は出ない。
「…?お前…声、出ないの?」
少し迷ってから頷くと、男の子は少し思案する間を空けてから、適当に小枝を拾って私に渡した。
「筆談は出来んだろ?とりあえず話しにくいから、名前教えて貰っていい?」
私は小さく頷いて、その小枝で『六花』と書いた。
「六花…冬生まれ?」
頷き肯定。
そうか…と言ってから、私が髪越しに見つめていたら、自分が名乗っていないように気づいた様。
「俺は松田。よろしくな」
あえての名字…なんだ…。
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