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「…全く、中央区から“鬼神〔きしん〕”のメンバーがなんでここの視察にくるんだよ。」
どうやら…上司みたいな者がくるみたいで、動き難くなるのが嫌みたいだ。
“鬼神”は、数ある軍の隊の中で唯一、国王が隊長として指揮をとっている隊。
事実、選りすぐりの兵士で構成されていて最高の地位を持つ隊と言っても過言ではないだろう。
「視察に来た所で何も変わりはしないだろ。
統括者が変わるだけで、何も…何も変わらない。」
中枢が腐っていたら、何も変わらない。
なにより、鬼神みたいなエリート中のエリートじゃ市民の話なんか聞かないだろう。
…あの三下ですら、あれだから。
茶髪の子供は、頭をボリボリと掻く。
「考えても…アホらしい。
飯でも探そうか。」
そう言った茶髪の子供は、裏路地に入っていく。
裏路地には、店のゴミ捨て場などが繋がっているからホームレス達がよく利用している。
人通りが少ない裏路地にホームレスがいるのはそれが理由だからだ。
茶髪の子供は、普段通りに裏路地を歩いていく。
手頃なゴミ捨て場を見つけると、辺りを見回して軍人が近くにいないか確認してからゴミ箱を漁る…筈だった。今回は、軍人を確認するのを茶髪の子供は怠った。
今までは、一度揉めあった場所には留まらなかったのだが今回はまだ見回っていたらしい。
「…おい、餓鬼。
そこで何をしている!」
軍人の男は、首にぶら下げていた小さな笛を吹き始めた。
基本的に軍人は、笛を使って仲間を呼ぶ。
緊急時以外の魔術の使用は禁止されているからだ。
「しくじった…。」
脱力する茶髪の子供を嫌らしい笑みを浮かべて軍人の男は見据える。
嬉しそうに、腰にさしてある警棒を右手に握り左手に軽くポンポンと叩く。
「…さぁ、楽しい1日の始まりだ。」
今日は…運が悪いな。
最悪だ。
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