運命の時

2/9
前へ
/80ページ
次へ
「雅也」 清人の声で目が覚めた。 「お願いがあるんだ」 俺の上から体を起こしながら言った。 「何?」 俺もベッドから起き上がった。 「どうせ死ぬんなら、出会った時と同じように、あの場所で死にたい」 「いいよ」 即答した。清人の最後の願いなんだから、聞いてやりたかった。 「ありがとう。じゃあ、行こう」 俺たちはそれぞれ着替えて、外に出る用意をした。 「はい、雅也。これ忘れないで」 清人が渡してくれたコートを羽織って、外に出る。 危ない階段を降りて、アパートの外に出ると、分厚い雲に覆われた空はまだ暗かった。 肩を寄せあうようにして歩いて、公園の噴水の前に到着した。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

668人が本棚に入れています
本棚に追加