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冬は嫌いだ。寒いから動きたくなくなる。でも僕は並盛の秩序だ。のんびりと休んでいる暇なんか無い。そう。今も僕は風紀の仕事をしている真っ最中だった。
「で、用件はなに」
「可愛い弟子に用も無しに会いに来ちゃいけねーのかよ!!」
「いけないね。第一僕はあなたの弟子じゃない」
僕の仕事を妨げようとしてるのは綺麗な金髪と琥珀色の瞳を持ち僕に好意を向けるイタリア人、跳ね馬ディーノ。
家庭教師だの弟子だの、赤ん坊の知人だというから多目に見ていたものの、最近ではしつこく言い寄ってくる。特にコレといって何かされたわけではないが、実に不愉快だ。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、彼は頻繁に此処、応接室に足を運んでくる。
「ひでぇな…。あんな事した仲なのによ」
「…ねぇその言い方だと僕とあなたがいかがわしい事をしたみたいじゃない」
「え、しただろ?」
「そうだね。あなたの夢の中ではね」
全く。僕が跳ね馬と色々したみたいな言い方やめて欲しいよ。それに良い大人が冷たくされればしゅんとするのもやめて欲しい。
彼は前 ―といっても半年程前― に僕を好きだと言ってきた。僕は勿論そんなことはどうでもよかった。彼の気持ちに少し興味もないし。只、問題なのはそのあとだった。想いを告げたからなのか異常にベタベタしてくる。何度振り払っても倒れてもまたしつこく抱きついたりしてくる。今では振り払うのすら疲れるので好きにさせていた。勿論それ以上の事をしようとするならば速攻咬み殺すけど。
嗚呼、のんびり解説している暇はなかった。早くこの仕事を終わらせなくては…。その前に温かいお茶が飲みたかった。お茶を淹れようと、ふと前をみればソファーに座っていた彼がいなかった。
「お茶、飲むんだろ?」
そういって彼は湯呑みを渡してくれた。そこには既にお茶がはいっていた。
「こぼさないように慎重に淹れたんだぜ!!」
「…そう」
まるで褒めてという子供みたいだった。前にも何回か彼はお茶を淹れてくれた事があった。しかし、彼のことだ。部下がいなければ何も出来ず、案の定お茶をこぼしたり湯呑みを落としたりなど何度も大変な事をしてくれた。そして今回。彼なりに努力したのだろう。
そういう姿をみれば甘やかしたい、と思う僕は落ちたものだ。
「…ねぇ」
「ん?なんだ、…」
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