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そこはいつ崩れてもおかしくない片田舎の廃屋だった。
雨がいつにもまして激しく横殴りに降り、雷が鳴り響いていた。
廃屋の中には微かに動く影があった。
傷つき、疲れた果てた男…
そして、その胸には赤ん坊を抱き抱えていた。
赤ん坊はこんな夜だというのにすやすやと気持ち良さそうに寝ている。
その廃屋へ一人の男が入って行った。
「見つけたぞ。バンパイアめ。今日こそは狩ってやる。」
男は大声で叫んだ。
「ふん。この私がこんな姿を曝すとはざまあないな。」
さきほどまで弱っていた男が言う。
「覚悟はできたか?」
ハンターの男が銀矢のボーガンを構えて尋ねた。
「最期に一言だけいいか?」
「なんだ?ボーガンでは死ぬのに不満か?」
男は笑った。
「そうだな。だが、言いたいのは頼みだ。」
笑みを浮かべて、弱った男が言う。
「ほう。化け物が人間に頼みとはな。」
弱った男はマントの下から赤ん坊を取り出した。
「私の代わりにこの子を育ててくれないか?」
「ふ、ふざけるな。なんで、オレが化け物の子供なんかを…。」
「半分は人間だ。」
「な、なに?それでも断る!!」
「ならばよい。私共々、この子も殺すがいい!」
「望み通りにしてやる!」
銀矢が放たれ、黒装束の男の心臓に突き刺さった。
男は息絶え、灰となった。
傷口からの出血は赤ん坊にかかり、赤ん坊が眼を覚ます。
ハンターの男は銀矢を装填し、赤ん坊に矢を向けた。
赤ん坊のつぶらな瞳が男を見つめる…。
それは嵐の夜の出来事だった。
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