一章 【帝王の存在】

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(…なんか、むかつく)  愛美は授業中だというのに怒っていた。それは、後ろの席なのもあるが、八雲がずっと光を見つめているかである。 「…………」  そして、見つめられている光は気にもせずに授業に取り組んでいた。  昼休み。また男子に囲まれて、八雲は困っているようだった。そして光は鞄から弁当を取り出して、八雲のほうを見る。 「光、光も八雲さんに気があるの?」  振り返れば、愛美が心配そうに光を見ている。 「そんなんじゃないよ。…そんなんじゃ」  すると、光は弁当を持って立ち上がり、後ろのほうへ歩く。 「ねえ、八雲ちゃんてほんとに彼氏いないの?」「八雲さん、誕生日いつ?」「ねえ八雲さん」 「そんなにいっぺんに聞かれても困りますよ」  八雲が本当に困った顔をしても、男子は止めようとしない。 「…!」  その時、男子の隙間を通り抜け、一本の腕が、八雲の左手を掴んだ。八雲はもちろん、囲っていた男子もその手の主を見る。 「…光さ」 「いくぞ」  手の主は光で、そのまま八雲を引っ張って行ってしまった。 「…今の、光だよな?」「あいつ、こんな行動早かったっけ?」  あっという間のできごとで、男子達は困惑していた。 「どうしたのいっちー?」 「なんでもない」  そんななか、なぜか愛美は不機嫌だった。  この学校の屋上は静かで、今は光ると八雲が居るだけだ。 「まったく、目立つんだから入学なんてわざわざしなくていいだろ」 「光様、ごめんなさい。まさかこんなことになるなんて思わなくて」  いつもと違い、光の眼は真面目である。 「別に怒ってるわけじゃないし、様は止せ。…俺がお前の主だったのは三千年も前の話だ」 「…今でも、光様は私の主です。雷帝や風帝、日帝もそう言ってます」 「ふう、…あの時、…月帝が死んだときに言ったはずだ。…解散だと」  光は八雲から眼を反らした。 「光様も、『神帝』が動き出したのはお気づきでしょう。…放っておく気ですか?」 「!」  すると光は、八雲の胸倉を掴んだ。恐ろしい形相で睨みながら。 「地帝も海帝もいないのに、俺一人で何をせよと言うんだ!」  しかし八雲は怯える様子もなく、光を見つめた。わずかに、光のほうが背は高い。 「私達、四帝がいます。光様を支えます。光様に尽くします。…どこまでも、ついて行きます」
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