プロローグ

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怪しい雲行き、雨の香りが淡く漂う7時前、愛知県が誇る巨大緑地公園、大きな噴水のその隣、大人が三人ほど座れそうなベンチに、彼女は座っていた。 ベンチは、暫く整備されていないようで、ほとんどペンキが剥げ、至るところに痛々しく傷がついている。 小雨の匂いが彼女を包んでいた。 冷たい雫に髪を濡らし、その冷気に抱かれ震えながらも、彼女はその場から動こうとしないようだ。 雨が、降り続いている……。 まるで女性を焦らすように、少しづつ服にシミを作っていく。 頬に、水滴が流れた。 顔を俯かせて、雨には頭髪と衣服しか濡らされてないというのに、頬には止めどなく赤い水滴が流れた。
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