刃渡り15センチメートル、三秒前と同じナイフ。

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見上げた空は曇天。 しかし、雲間からは、僅か夕暮れの陽光が差し込み、名古屋市が誇る緑地公園を、赤く彩っていた。 赤く彩ると言えば、四季は既に折り返し、今は秋。 紅葉が行く道を色づかせてくれる。 涼しげな風が身に染みる秋空の下、落ち葉を音を立て踏みしめながら歩く二人の男女が居た。 男は、十代後半の中肉中背。 少しのほほんとした、どこにでも居るような、少し頼りない顔つきで、少し長めに伸びた黒色の前髪は、ヘアピンで頭上に留められている。 服装は、無地の白いシャツの上に、薄手の青いパーカーを羽織り、下は青いジーンズと、なんだか、少し失敗した感じの服装だが、本人はまるで気にするワケでもなく、少し物思いにふけっているような面構えだ。 何か言いたげだが、口に出すのはなかなか決断に至らないのか、アホらしく口を開け閉めしている様子がどうにも情けない印象だ。 一方女性は、同じく十代後半だが、男と比べて遥かに“アカ”が抜けている。 ライトブラウンに染めた髪は腰まで伸ばし、長い前髪は邪魔にならないようにヘアピンで左右に留められている。 首には鎖を模したネックチェーンが巻かれ、華奢な手首からはブレスレットを幾つか覗かせている。 顔は、まるで芸能人みたいに整った風貌。 手入れせずとも整った眉、瑞々しい頬、通った鼻筋、ぷっくりとした唇。 年の割に妙に大人びた雰囲気が、見ている側としては、どこかくすぐったい。 焦げ茶色のコートに身を包み、下は濃紺のジーンズと、やはり“大人っぽい女性”を意識した服装だ。 だが、そんな落ち着いた服装には、ジャラジャラとしたネックチェーンやブレスレットやらは少し不似合いだが、本人はそれが良しと考えているらしい。
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