別離

1/5
前へ
/93ページ
次へ

別離

「これで、いいのね」 グリーンの紙の離婚届には上村純一、上村千枝子と書いて二人は離婚届に判を捺した 「保証人はこっちで探しておいて明日区役所に出しておくからな」 「分かったわ」 「ああ。お前もこれで、あの男の所へ堂々と行けるだろう」 「そうね。あなたにもう嘘をつかなくて良いわ」 「約束通り、慰謝料無しでいいな」 「もちろん。じゃあ荷物お願い」 千枝子は、振りかえる事も無くドアを閉め跳ねるように歩くヒールの音が響いて消えていった 最後くらいにっこりと笑って握手をして別れたかったが、千枝子はそんな事よりもできるだけ早く彼の元へ行きたかったらしく、 純一はため息をついて部屋の、片づけを始めた。 段ボールに、千枝子の本や洋服を入れ、アルバムの写真を見ながら、ときめいていた若いころを思い出し その中には、見た事もない派手な色のレースの下着や、赤いレースのTバックのパンティがあった。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

536人が本棚に入れています
本棚に追加