虚無の侵食と自覚の無い憂鬱

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闇の帳に支配された夜…… 僕は必然的に研ぎ澄まされた剃刀を握る 自らの醜い躯に罅を挿れる為に…僕の手首にすっと剃刀を当てる 綺麗な紅い血が手首を滴り、甘い蜂密の様に溶けていく 僕はその痛みに喘いだ まるで、御主人様から快楽を与えられたmasochistの様だ ダラダラと堕ちていく血に安堵と軽い倦怠がインストレーションを起こし僕の中に流れていく 僕は何時からこうなったのだろう? 痛く、より痛くと己に刻む 初めて数多の人から虐められたあの日を思い出す あの時僕にとって痛みは苦痛でしかなかった そして誰からも疎外され、死に等しい絶望を覚えていた時、僕を救ったのは一本の剃刀だった 初めて己を己で傷付けた 真っ赤な美しい血が己の醜い肌を滴っていく 『こんなに美しい物が僕の身体の中に流れて居るんだ』 そう思った時、僕の躯は多大なる歓喜と安らぎに包まれた 苦痛など感じないに等しかった 痛みは歓喜と安楽を携えていると知った それから僕は夜になってから己を痛めつけるようになったのだ 日に日に酷くなる傷に喜びを覚える そして流れる血の量はやがて致死量を超える 薄れ往く意識の中で思った 嗚呼、僕は幸せだった…
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