54人が本棚に入れています
本棚に追加
美紗は死んだ。
一年前。交通事故だった。
何かの病ならば美紗の死を覚悟する余裕はあったのかもしれない。
昨日まで、いや、さっきまで俺のすぐ右で微笑んでいた笑顔が、
次の瞬間、白く、なっていた。
夢だと思った。悪夢から目が覚めたときのあの安堵感。あの感覚がほしくてたまらなかった。
しかし俺の心を底なし沼のように黒く占拠したのは、言い尽くしようのない絶望感だった。
遺影を目の前にして涙がでなかった。
美紗の両親が立ち尽くす俺の肩をたたき、無言で頷いた。
血の通っていない美紗を見て死の単純さを悟った。
あの日以来、俺は変わってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!